腸の働きを端的に言えば、栄養素の消化吸収と、排泄を順調にこなす作業という事になります。
口から入った食物は胃で分解され、栄養分が小腸で消化し吸収され、約24時間後に、便となって肛門から排出されます。
腸全体は、腹腔内を動かないように腸間膜という膜で固定されていて、6m前後の長さの小腸は、上部には胃の下部で口を開いている幽門から始まり、大まかに12本の指を並べた幅の長さにあたる馬蹄形の十二指腸が腹壁に固定されています。
さらに、腹壁に直接は固定されていない空腸、回腸(厳密なさかいがなく、腸間膜に包まれている)とに分けられ、小腸の内側は絨毛(じゅうもう)と呼ばれる粘膜の突起状のひだが生えており、その中に小さなリンパ管や毛細血管が数多くあり、栄養素の約90%が吸収される大切な所になります。
小腸は胃からの酸性の内容物によって腸が傷つかないように、アルカリ性の分泌液を出し、中和しながら腸を保護すると同時に、3つの消化液(膵液,腸液,胆汁)の腸液には消化酵素が含まれ、栄養素を分解して3~5時間ほどで消化・吸収し、残りの内容物は大腸へ送ります。
1.5m前後の大腸は盲腸、結腸(上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸)及び直腸に分けられ、主な働きは大腸の右側では水分の吸収、左側では固形の老廃物の排出作業をこなします。
大腸の内側はなめらかな粘膜におおわれ,粘膜は粘液を出して老廃物をすべりやすくしています。
便秘や下痢は大腸の働き具合により起こるものなので、日々の規則正しい生活が大切になってきます。
便秘や下痢の原因は、一見正反対の現象に見えますが、整えるという意味では同じように考えれば良いと思います。
まず、水分補給の適正な量を考えて見て下さい。
生活空間の空気の乾燥などが原因で、知らない間に腸内の潤いも不足すると、水分不足で便が硬くなり排出されにくくなります。
さらに冷えなども、血液循環が悪くなり、その結果腸の働きを悪くしてしまいますし、暴飲暴食は胃腸を疲れさせ、下痢や便秘を繰り返しやすくし、便通のリズムが乱れさせてしまいます。
便秘を防ぐ食材として食物繊維を含むものを考えると、さつまいも等の芋類、れんこん・ごぼう等の根菜類・海草類・キノコ類、果物等を常食して下さい。
昔から腸は肌の鏡と言われている様に、腸の働きが悪いと、特に便秘などは肌荒れとして出てきます。
腸について言えば、最近よく聞くのが腸内細菌。
腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)または腸内フローラという言葉があちらこちらで聞かれるようになりましたが、私たちの腸内には100種100兆個にものぼる腸内細菌がいて、腸内細菌を大きく分けると、有用菌(善玉菌)、有害菌(悪玉菌)、日和見(ひよりみ)菌の3種類があります。
善玉菌で有名なのが、ヨーグルトなどに含まれるビフィズス菌などの乳酸菌が、悪玉菌で有名なのは食中毒を引き起こすことで知られる大腸菌、ウェルシュ菌などです。
ただし、大腸菌は有害な菌でありながら、ビタミン合成に関係するなど、有用な働きをすることもあり細菌は複雑です。
日和見菌は、数の上では一番多く、普段は人体にほとんど影響を与えませんが、いつも善玉菌群、悪玉菌群どちらが優勢かに注目していて、そして、その時その時で優勢なほうに加担する性質をもっています。
赤ちゃんの時の腸内は、善玉菌が優勢の構成になっています。しかし、間違った食生活やストレス、そして年齢を重ねるに従って、どんどん悪玉菌の占める割合が増えてゆきます。
有害菌が増殖してくると、悪玉菌群が日和見菌群の支援を受けて、下痢や便秘、腸炎を引き起したり、長期的には老化が進行したり、ガンや生活習慣病の発生など、様々な疾病の原因となります。
乳酸菌は腸粘膜をほどよく刺激して、免疫細胞を活性化させるはたらきがあります。
ただし、乳酸菌は一定期間しか腸にとどまることはできません。
最近は腸まで届く乳酸菌等もあるので、定期的に摂取することをお薦めします。
元気な腸を育てるためには、発酵食品・食物繊維・オリゴ糖・ビフィズス菌・乳酸菌などを、多く摂取出来る食べ物を積極的に食べて下さい。
例えば、ヨーグルトや日本古来の伝統食品、例えば納豆や味噌、漬物などにも、腸の活動や免疫機能を活性化する働きがあります。
腸のもうひとつの重要な働きとして、人間の体には、白血球やT細胞、B細胞など、さまざまなタイプの免疫細胞があり、外敵と闘っています。
体全体の免疫細胞のおよそ6割程度が集中しているのが腸。
この腸内環境のバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になると、感染症だけでなく、がんやアレルギー、生活習慣病など、さまざまな不調の原因になります。
つまり腸を健康に保つことが、免疫力アップ、すなわち病気にかかりにくい体作りの基本にもなります。