桂枝茯苓丸と当帰芍薬散はともに、いわゆる婦人病に用いる代表的方剤ですが、おもに生理不順や生理痛、更年期障害、のぼせ、下腹部圧痛、気逆による下半身の冷え、などに用い血行をよくする漢方薬です。
漢方では、血行障害や鬱血をお血(おけつ)という概念でとらえ重視します。女性の月経トラブルを含め、いやゆる血の道症には、このお血を改善する漢方薬がよく使われます。
その代表が桂枝茯苓丸で、血行をよくして熱のバランスを整えることで、のぼせや冷えを改善し、子宮などの炎症をしずめます。また、ホルモンのバランスを整える効果も期待でき、諸症状をともなう更年期障害にも、子宮内膜症や筋腫、ニキビやシミ、しもやけ、痔、打ち身、肝臓病などにも用いられます。
一般に体格がわりとしっかりした赤ら顔の人に向きます。
ただ、ここで使用されているのが桂枝なら何の問題もないのですが、肉桂が使用されていると薬効が違ってきます。
桂枝と肉桂は同じ原植物であっても薬用部分が異なっており、桂枝は若い細枝、肉桂は幹皮である。ともに温通散寒作用があるが、肉桂は辛甘・大熱で作用が強く、裏を温め腎陽の温補に優れていて、桂枝は辛甘・温であり、作用は肉桂よりも穏やかで、主として肺・心・膀胱経に作用します。
漢方は、気(き)・血(けつ)・水(すい)の医学と呼ばれ、気というのは一種の生命エネルギー、血は血液、水は水分のことです。
この三つの要素が体の中を順調に流れることによって、心身の健康が維持されるのですが、それらの流れが停滞すると様々な不調を起こすので、漢方薬はこの気・血・水の滞りをよくして病気を改善することを目標としています。
三つの要素のうち、血の流れが滞ったものはお血(おけつ)と呼ばれ、お血は非常に多くの病気や不調と関係していると考えられています。
【配合生薬】
桂皮(けいひ):4g、茯苓(ぶくりょう):4g、牡丹皮(ぼたんぴ):4g、桃仁(とうにん):4g、芍薬(しゃくやく):4g
桂枝(桂皮)には健胃作用のほか発散作用があり、のぼせや頭痛によいとされ、芍薬は痛みをとる代表的な生薬です。そのほか、気分を落ち着け余分な水分を取り除く茯苓、血液循環をよくする桃仁や牡丹皮などが配合されて、これらの相乗効果で、よりよい効果を発揮します。
【適応症】
比較的体力のある人で、めまい、のぼせ、頭痛、下腹部痛、肩こりなどの症状がある場合の子宮内膜炎、月経不順、月経過多、月経異常、月経痛、月経困難、帯下、子宮内膜炎、子宮実質炎、卵巣炎、子宮周囲炎、おりもの、冷え症、更年期障害、肩こり、めまい、便秘、打撲傷、にきび、湿疹、皮膚炎、じんましん、しみ、皮膚炎、皮下出血、痔出血などに用いられます。
【使用上の注意】
著しく体力の衰えている人や妊婦は使用できない場合があるので、医師または薬剤師に相談してください。
発疹やかゆみなどの過敏症状が現れることがあります。妊婦または妊娠している可能性のある女性の服用は慎重を要します。
体がひどく弱っている人は慎重に用いる必要があります。