十味敗毒湯は「万病回春」という古典書にのっている荊防敗毒散をもとに、わが国が世界に誇る外科医・華岡青洲(はなおかせいしゅう)によってその名が示すよう、10種類の生薬を用いて毒素を敗退させることを目標に考えだされました。
華岡青洲は1804年(文化元年)に通仙散(つうせんさん)という経口麻酔薬をつくり、この麻酔薬を用いて世界ではじめて乳ガン手術をしたことで有名で、彼が残した治療薬は数多くあります。
十味敗毒湯は腫れ物や湿疹、皮膚炎などに用いられ、皮膚の赤みやカユミを発散し、腫れや化膿をおさえます。
また、そのようになりやすい体質を改善します。体力が中くらいの人に向く処方です。
【配合生薬】
柴胡(さいこ):2~3g、桜皮(おうひ):2~3g、桔梗(ききょう):2~3g、川きゅう(せんきゅう):2~3g、茯苓(ぶくりょう):2~4g、独活(どっかつ):1.5~3g、防風(ぼうふう):1.5~3g、甘草(かんぞう):1~1.5g、生姜(しょうきょう):1~3g、荊芥(けいがい):1~1.5g、[連翹(れんぎょう):2~3g]
防風・荊芥・独活・川きゅう・生姜は、体表血管を拡張して発汗し、皮疹を透発させます
かゆみをとめ、川きゅう・独活は鎮痙作用をもち、柴胡・連翹・桜皮・甘草は、消炎、解熱、抗菌に働き化膿を抑制します。
桜皮・桔梗は、排膿作用をもち、柴胡・甘草は、鎮静と自律神経系の調整に働きます。茯苓は、組織や消化管内の水分を血中に吸収して利尿作用により除きます(利水)。防風・独活は、利尿を補助し、これらの相乗効果で、よりよい効果を発揮します。
【適応症】
体力中等度の人で、化膿性皮膚湿疹・急性皮膚湿疹の初期、じんましん、急性湿疹、水虫などに用いられます。
発汗、排膿作用と血行をよくします。
【使用上の注意】
体力のない人で、発疹の悪化や胃の不快感などの症状が現れることがあります。
体がひどく弱っている「著しい虚証」の人には向きません。また、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢など、胃腸の弱っている人は慎重に用いる必要があります。
1ヵ月位(化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、急性湿疹に服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならない場合、医師または薬剤師に相談してください