六君子湯は胃腸の働きをよくして、元気をつける漢方薬です。
補気剤の基本である四君子湯に陳皮と半夏が配され、痰飲(水毒)を消す二陳湯の作用も加わった薬方です。
内臓を温めて働きを活発にし、身体の力をつけながら気と水を下ろす作用があります。
処方構成からみると、小柴胡湯の一歩手前の軽い少陽の薬方であり、脾胃虚弱タイプの諸疾患に幅広く用いられます。
神経性胃炎で六君子湯の効果が認められない時は、安中散を試してみてもいい。
【配合生薬】
人参(にんじん):2~4g、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ):3~4g、茯苓(ぶくりょう):3~4g、半夏(はんげ):3~4g、陳皮(ちんぴ):2~4g、大棗(たいそう):2g、甘草(かんぞう):1~1.5g、生姜(しょうきょう):1~2g
蒼朮はホソバオケラの根茎、白朮はオケラまたはオオバナオケラの根茎、茯苓はマツホドと言う、サルノコシカケ科の菌類の一種から取れる生薬で、人参は「朝鮮人参」・「高麗人参」と呼ばれているもので、半夏はカラスビシャクという、サトイモ科の植物のコルク層を除いた塊茎。陳皮は熟したみかんの皮を干したもの。甘草は、甘草というマメ科の植物の根を乾燥させた生薬です。そして大棗は、ナツメの実を乾燥させたものです。
生姜はショウガの根茎の事で、この場合の「生姜」は、「しょうが」ではなくて「しょうきょう」と読みます。
発散作用・健胃作用・鎮吐作用があるとされているのとは別に、生姜は大棗との組み合わせにより、他の生薬の副作用をやわらげる働きがあるとされていて、大棗も、強壮作用・鎮静作用があるとされていますが、生姜との組み合わせにより、他の生薬の副作用をやわらげるために配合されています。
その他、白朮は消化器・健胃・利尿・発汗・鎮静の効果があるとされ、蒼朮は成分的には白朮に属すものですが、白朮よりも発汗作用が強いとされている生薬で、茯苓は利尿・鎮静作用があり、人参は滋養強壮に、半夏は痰きりやコレステロールの吸収抑制効果があるとされています。甘草は緩和作用・止渇作用があるとされ、これらの相乗効果で、よりよい効果を発揮します。
【適応症】
比較的体力の低下した胃腸の弱い人で、食欲不振、疲れやすい、貧血などの症状がみられる場合の胃炎、神経性胃炎、胃アトニー、胃下垂、胃拡張、胃神経症、胃潰瘍、胃痛、消化不良、食欲不振、嘔吐、などに用いられ、つわりなどを改善します。
手足が冷え、みぞおちのつかえ、軟便などがおこりやすい、貧血気味の人に用いられます。
【使用上の注意】
吐き気、腹部膨満感、下痢などの症状が現れることがあります。妊婦または妊娠している可能性のある女性は使用できない場合があるので、医師または薬剤師に相談してください。