乙字湯 オツジトウ

乙字湯は日本で生まれた漢方薬で、江戸時代の医師、原南陽(はらなんよう)によってつくられました。乙字湯の「乙」は甲・乙・丙の乙で、乙字湯のほかに、甲字湯(こうじとう)や丙字湯(へいじとう)などの処方もつくられています。甲字湯や丙字湯は痔の漢方薬ではありませんが、乙字湯は痔に使用されることがほとんどです。

 

痔の炎症をおさえ、また便通をよくします。適応証(体質)は、実~中間証(比較的体力充実)で、便秘がちの人に向いています。

 

痔はイボ痔キレ痔痔瘻の3つに大別することができます。イボ痔はイボのような突起が出る痔、キレ痔「裂肛(れっこう)」は肛門の奥が切れる痔です。

イボ痔は正式には「痔核(じかく)」と呼ばれ、肛門の内側にできるものを「内痔核(ないじかく)」、肛門の外にできるものを「外痔核(がいじかく)」と言い、内痔核が大きくなって肛門の外に脱出してしまったものを「脱肛(だっこう)」と言います。

また、痔瘻は肛門の奥からトンネルができ、外に膿が出る症状で長期間放置すると癌の危険性があります。

 

痔は、立って歩く人間の宿命ともいえる病気で、肛門の静脈の網目状になっている部分(静脈叢)がうっ血して起こると考えられている。西洋医学では、消炎鎮痛薬や坐薬などを使って治療を行い、それでも効果がみられないときは、外科的な手術を行う場合もありますが、漢方医学では、痔は、血液の流れが悪化する「お血」と胃腸機能の低下によって起こるととらえ、「お血」を解消する薬や胃腸の働きを整える薬を選んでいきます。

【配合生薬】
  当帰(とうき):4~6g、柴胡(さいこ):4~5g、黄ごん(おうごん):3g、甘草(かんぞう):2~3g、升麻(しょうま):1~2g、大黄(だいおう):0.5~1.5g

 

柴胡、黄ごん、大黄、甘草などは、炎症をしずめ痛みをやわらげる働きをし、大黄には、便通をつける作用もあります。
当帰には補血作用があり、升麻は痔核や脱肛によいといわれ、これらの相乗効果で、よりよい効果を発揮します。

 

【適応症】
痔全般、痔核、切れ痔、脱肛、肛門出血、便秘、を改善します。
便がかたく、便秘がちで比較的体力のある人に用いられます。

 

【使用上の注意】
アルドステロン症、ミオパシー、低カリウム血症のある人は使用できません。下痢・軟便の人、著しく胃腸の弱い人、著しく体力の衰えている人や、食欲不振、吐き気、嘔吐のある人、妊婦なども使用できない場合があるので、医師または薬剤師に相談してください。

直葬・天国への引越