数種類の「生薬」の組み合わせの妙。 |
日本の漢方は古代中国の医学を、そのまま発展させた中医学とは違います。
日本では日本人に合うように、経験を生かした処方を上手に使い、さまざまな工夫をし、実際的な考え方を江戸時代に集大成した日本独自の伝統医療です。
また、「漢方」という言葉も江戸時代の「蘭方」つまり西洋医学が日本に入り、それ以前の伝統医学と区別するために日本でつくられました。
血液の巡りの「血」・エネルギーの流れである「気」・体の水分の調整を考える「水」を基本に患者の状態を総合的にとらえ、パターン化された「証」に照らし合わせて治療します。
食後に眠くなる、何となくだるいという状態の時、一度漢方薬を試してみるのもよいかもしれません。
漢方薬に対して通常の薬局では不安な方には、近隣の漢方施設を探す、漢方のお医者さん探し が便利です。
代表的な漢方薬としては…
漢方薬は原則として決められた分量で、複数の生薬(自然界にある植物や鉱物などのうち、薬効を持つもの)の組み合わせによって作られたものです。
生薬はその性質上、化学的に製造された医薬品と違い、採取した土地やその年の天候によって品質に差が出てきます。
また、同じ植物でも葉、茎、根など、部位によっても薬効が異なり、この他にも新旧や採集後の加工調製方法の違いなど、漢方生薬の品質は様々な要因で変化します。
漢方は独自の診察方法があり、自覚症状から聞いて判断する「問診(もんしん)」、姿や表情からみる「望診(ぼうしん)」、声の出し方や話し方などの「聞診(ぶんしん)」、舌やお腹などを見る「切診(せっしん)」など総合的に判断し証(虚証・中間証・実証)を見極めます。
漢方薬の面白いところは、同じ病気でも患者さんの状態により服用する薬が違います。
また、同じ薬を複数の違う病気に処方されることもあり、これは患者さんひとりひとりの重要な診断である、証(体内の見えない部分の病気が体表など見える部分に現れた症状)にもとづき体質を見極めながら処方するためです。
何千年という長い年月をかけておこなわれた治療の経験によって、どの生薬を組み合わせるとどんな効果が得られるか、また有害な部分がないかなどが確かめられ、用いる条件も細かく定められて漢方処方として体系化されました。
また、民間薬は昔から経験的に使われてきた主に一種類の薬草からなるもので、有名なところではゲンノショウコ、センブリなどがありますが、あくまで家庭で治せる範囲のケガや病気に使われ、医学的な背景はありません。
栄養補助食品であるサプリメントは健康食品と同様、あくまでも食品のひとつです。
東洋医学は体全体のバランスをとることを治療方針とし、とくに大切な働きをしている五臓六腑の機能的バランスを整えることを中心に考えられています。
五臓六腑のいずれの機能も突出して亢進したり、逆に低下しても、からだ全体にひずみを生じ、病気発症のもとになると考えられています。
「五臓」とは中の詰まった器官を指し、肝→心→脾→肺→腎→肝はそれぞれ矢印の向きに機能を助け(相生)、肝→脾→腎→心→肺→肝は矢印の向きに抑制(相剋)し、貯蔵する器官とされています。
「六腑」とは中が空になった器官を指し、胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦の六つになります。
あまり知られていない三焦とは内臓を入れる器(入れ物)のことで、みぞおちとへそを境にして上から上焦・中焦・下焦の三つを合わせて三焦といい、「六腑」はエネルギーを集める器官とされています。
次によく出てくる言葉の陰陽ですが、万物は陰と陽の部分から成り立っていて、冷やす性質をもつものを「陰」、暖める性質をもつものを「陽」と考え、その関係は常に相対的なもので、絶対的なものではなく、またどちらかが大切というものではなく、陰・陽ともにバランスが重要になり、気のめぐりの調和した状態をベストと考えます。
漢方薬はその特性から、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に用いられ、最近は西洋医学の医師の間でも使用されるケースが広がっています。